【リーガルダンジョン考察】ED14は諦めました。【Legal Dungeon】

 

※2020年  6月 追記
※2020年  7月 追記及びコメントの引用、新たな章の追加等
※2020年12月 全面的に加筆修正
※2023年  7月 各事件の元ネタとなる事件を追記

 

 

1 本稿の趣旨 

 Legal Dungeon/リーガルダンジョン(以下「本作」とします。)について、自分用のメモをまとめた記事です。当然、本作のネタバレが多数あります。
 長い記事なので全部を読むのは大変かもしれません。各章は基本的に独立しているので、必要な部分を適宜読んで下さい。

・解説的な記事を求めている人は、「6 製作者の意図」に本作の製作者本人が書いた記事のリンクを貼っているので、それを読めばいいと思います。

・ED14を探している人は、「9 ED14について」に書いてあることが参考になるかもしれません。

・複数の事件の捜査資料に登場する人物達については、「4 複数回登場する人物について」にまとめてあります。
 
・本作の攻略記事はこちら

 

※この記事において、本作のタイムライン上の各会話を【会話のタイトル】と表記します。
例えば、タイムライン上の一番最初(一番左)の会話に言及するときは、【会話 刑事課捜査係長着任】と表記します。




2 ダンジョンの意味について

 本作では、意見書作成中に唐突にダンジョンに入り、警察官と被疑者のやりとりが行われる。一見すると、現実に清崎蒼本人と当該事件の被疑者が議論をしているようにも思える。

 しかし、4章のダンジョンにおいて明言されているように(下記画像参照)、各ダンジョンは清崎の「頭の中で起きてる」のである。すなわち、各ダンジョンは、清崎が結論に至るまでの思考過程を表しているもの(一種のブレインストーミング)であり、決して現実に清崎蒼と被疑者が議論をしているわけではない。清崎が、いわば一人二役として、警察官・被疑者それぞれの立場からの主張・反論を考えながら、意見書を書いているのである。

 そもそも、書類作成の仕事をしている途中で急に被疑者が出てくることを不思議に思わなかっただろうか?意見書作成時に捜査はすべて終わっているはずなのに、被疑者と再度やりとりをしていることについて疑問を抱かなかっただろうか?清崎の仕事は書類作成なのに、被疑者と議論して「論破」していることに違和感は無かっただろうか?これらのことからも、各ダンジョンは清崎の「頭の中で起きてる」ことは明らかである。

 

 本作において、清崎は喋らない主人公であり、清崎が何を考えているのかプレイヤーからはわからないことが多い。
 しかし、各ダンジョンは清崎の「頭の中で起きてる」ので、警察官役と被疑者役の発言内容から、清崎の当該事件への見通し・思惑・心情等を窺い知ることが出来る場合がある。
 例えば、下記画像は、清崎が良心の呵責に苛まれている貴重(?)なシーンである。

 また、各ダンジョンは清崎の「頭の中で起きてる」ので、被疑者が犯行をしたことをほのめかしていたとしても、現実に犯行をしたとは限らない。例えば、2章のダンジョンにおいて、小太刀慎二がサイコパスと表記されていたり、小太刀慎二が証拠隠滅をほのめかすところがある。これらからは、小太刀慎二が犯行を行って証拠隠滅をしたと清崎が考えていることはわかるが、実際に小太刀が犯行をしたのかはわからない。

 

3 清崎蒼が宮城真理を殺害したのか?

 1章の被疑者である宮城真理は、2章の事件の捜査書類に名前が出てくる(犯罪捜査経歴照会の事件番号1005)が、その後直接的にゲーム上に現れることはない。もっとも、5章等の被害者である山本孝之が宮城真理を探して行動していたことなどから、宮城真理の結末についてプレイヤーには一定の関心がある。

 では、宮城真理はどこへ行ったのか?
 この点、清崎蒼が宮城真理を殺害して冷蔵庫に入れていたという見解をしばしば見かける。しかし、以下に述べるように、この見解を採用することは難しいように思われる。

(1) 清崎の被疑事実について

 清崎が宮城真理を殺害していたならば、ED13における清崎の被疑事実に殺人罪(正確には、殺人罪の正犯)がなければならない。
 しかし、ED13によると、清崎の被疑事実は「殺人幇助、死体遺棄、職務放棄」(下記画像参照)であり、殺人罪はない。
 したがって、清崎は宮城真理を殺害していない。



 これに対して、被疑事実の中に殺人幇助があるではないか、という反論があるかもしれない。
 しかし、5章の【殺人罪起訴 犯人の名は「構造」】において、
 「H氏ら2人は、7月24日未明、殺人事件の一部始終を目撃したにもかかわらず過度なおとり捜査で殺人を幇助したことが発覚することを恐れ、死体遺棄し、殺人事件の発生を隠蔽した疑いで現在調査を受けている模様です。(中略)(記者へ)逮捕された警察官たちはどのような嫌疑に問われているのでしょう?(アナウンサーへ)殺人幇助、死体遺棄、そして職務放棄ですね。」とある。
 ここでは、おとり捜査に利用した山本孝之が西尾瑠奈に殺害されたことについて、原田らが殺人幇助の嫌疑を受けていることが述べられている。
 このことからすると、清崎の被疑事実の殺人幇助も5章のおとり捜査についてのものと考えるのが自然である。

 また、そもそも清崎は警察組織における昇進のため(=ポイントのため)に不正を働いている。ポイントにつながらない宮城真理の殺害を行う動機が清崎にはない。

(2) 「その子」とは誰のことか

 7章の【殺人罪起訴 罪人は誰?】において、白澤検事は、清崎蒼に対して、冷蔵庫を開けさせた後で「その子に会ってから、君は何をしたんだっけ・・・?」と発言している(下記画像参照)。
 清崎が宮城真理を殺害したという見解の根拠として、「その子」=宮城真理と理解した上で、この発言が挙げられることがある。



 しかし、結論から言えば、「その子」とは鳥居陸(6・7章の被疑者の息子)のことであると思われる。そして、「その子に会ってから、君は何をしたんだっけ・・・?」という発言の意図するところを敷衍すれば、「清崎君は、鳥居陸に会って金槌をもらって、その後に金槌で山本孝之の頭部を砕いて、金槌に山本孝之のDNAを付着させたんだよね?それをマネキンで実演してくれるかな?」という程度の意味になると考えられる。(実際に、その後、白澤は、清崎をして金槌でマネキンの頭を砕かせている。)

 これに対して、清崎と鳥居陸が会ったという記述がない、との反論があるかもしれない。しかし、清崎が、鳥居陸に会って、金槌を渡されたことを推測させる記述はある。
 まず、【暴行罪起訴 誰も死ななかった】において、原田が、通話相手(=鳥居陸)に対して、「証拠だぁ?」「警察のお姉さんが言ってた?」「わざわざ隠しといてくれたんだな」と言った後、清崎に対して「金槌なんざ、何に使うつもりだ?」と発言している。
 これらの発言からすると、清崎が、鳥居陸に対して、証拠である金槌を隠しておくように言っていたことが推測される。

 次に、【暴行罪不起訴 法の限界】において、原田が、「被害者の息子(=鳥居陸)に何の用だよ」「ま、係長が勝手に会う分にゃ、知ったこっちゃねぇけどな」と発言している。
 この発言に加えて、上述のように清崎が鳥居陸に金槌を隠しておかしたことからすると、暴行罪不起訴ルートにおいて、清崎が、鳥居陸に会って、隠しておかした金槌を受け取ったことが推測される。


(3) そもそも冷蔵庫の中身とは

 7/24夜~9/8頃までは、冷蔵庫内には山本孝之の死体が保存されていた(5章の【会話 ワイルドカード】における原田「死体・・・埋めてねえのか?どこに隠しやがった」)。
 9/9頃以降は、冷蔵庫の中身は空だが、冷蔵庫内には山本孝之の死体を保存していた痕跡が残っている(7章の【殺人罪起訴 罪人は誰?】において、冷蔵庫を開ける際に「糊のようなものが破れて」とある。山本の死因は刺殺なので、血糊か何かだと思われる。)。

以上からすると、
【連続殺人罪起訴 感謝の言葉】での、原田の発言中の「お前んチの冷蔵庫で熟成されてるおつまみ」とは、冷蔵庫内の山本の死体を保存していた痕跡を指していると考えられる。
殺人罪起訴 罪人は誰?】での、白澤検事が冷蔵庫を開けた際の「完全に、鬼畜の所業だね」という発言は、清崎が冷蔵庫内で山本の死体を保存してい(て、その後、鳥居祐一に山本殺害の濡れ衣を着せ)たことを指すものと考えられる。
【& 署長の計画】で、署長と渋川の間で「『冷蔵庫』は、いつ開ける」かが話題になっているのは、冷蔵庫内の山本の死体を保存していた痕跡が清崎にとって致命的であるからと考えられる。




4 複数回登場する人物について

(1)本作では、複数の事件の捜査資料や会話にまたがって登場するキャラクターがいる。清崎・原田・渋川・川口を除いて列挙すると、以下の通り。

山本孝之(宮城真理の祖父)
・1章の被疑者
・5章の被害者
・7章の被害者
・印刷所の所長により詐欺罪で告訴される(【&ビラ】)

宮城真理(山本孝之の孫)
・1章の被疑者
・小太刀慎二にBBT薬代金名目で2万円を交付(2章捜査資料p22の前科を検索)

鳥居祐一(鳥居理佐子の夫、鳥居陸の父)
・1章の通報者
・6章の被疑者
・7章の被疑者

鳥居理佐子(鳥居祐一の妻、鳥居陸の母)
・6章の被害者
・7章の被害者

小太刀慎二(小太刀政広の息子)
・2章の被疑者
・宮城真理からBBT薬代名目で2万円を受取り(2章捜査資料p22の前科を検索)
・西尾瑠奈(5章の被疑者)が5章の犯行直前に電話(つながらない)(5章捜査資料p7)
・7章における山本孝之の死体の発見者(7章捜査資料p49)

金沢未来(市橋交番巡査)
・1章の逮捕者
・6章の逮捕者
・ED9で市橋交番から異動してくる

小太刀政広(小太刀慎二の父)
・大嶋伸也を詐欺罪で告訴(プロローグ捜査資料p7)
・【連続殺人罪起訴 感謝の言葉】等に現れる


(2)このように複数の捜査資料に登場する人物達がいることには、何か特別な意図があるのだろうか?特に、小太刀慎二がよく現れていることはなんとも怪しい。

 しかし、個人的には、イースターエッグ的な要素というか、プレイヤーに捜査資料を隅々まで読ませるための仕組みのひとつにすぎないのではないかと思う。
 本作の製作者の記事の内容からしても、小太刀慎二が何らかの暗躍をしているわけではない、と考えたほうが無難であろう。



 

5 本作における3つの「正解」

 本作の各事件には、3つの観点からの「正解」、すなわち、法律上の「正解」、組織にとっての「正解」、清崎蒼にとっての「正解」、が用意されているように思われる。複数の「正解」が用意されているために、それぞれの事件は比較的単純な事案でありながらも複数回のプレイに耐えうる内容となっている。

 一つ目の法律上の「正解」は、被疑者の行為に犯罪が成立するかどうかを純粋に判断したものである。この「正解」は各事件の終わりに明示される。ダンジョン終了後、起訴~判決確定の画面での裁判所の判決とその理由の抜粋がそれである。 
 二つ目の組織にとっての「正解」とは、警察組織にとって都合の良い意見である。各ダンジョン前後の会話や「あおい」の発言において、組織にとっての「正解」が示される。
 三つ目の清崎蒼にとっての「正解」とは、清崎蒼が考える事件の真相である。「2 ダンジョンの意味について」で述べたように、各ダンジョンは清崎蒼の「頭の中で起きてる」。清崎蒼にとっての「正解」は、各事件のダンジョンでの警察官と被疑者のやりとりにおいて(明示的とは限らないが)示される。

 意見書の結論としては、起訴か不起訴かのいずれしかないため、3つの観点のうち2つの観点からの「正解」が同じになることが大半である。もっとも、3つの観点それぞれで異なる「正解」が用意されていることもある。

 

 

6 製作者の意図

Burdening players with the power of the system in Legal Dungeon

 製作者本人による本作についての解説記事。英語版と韓国語版があり、ほぼ内容は同じ。
 英語版の記事の内容は、大体以下の通り。


どのようにしてプレイヤーに罪悪感を抱かせるか

話者:Somi

 こんにちは。韓国を拠点とするゲーム開発者のSomiです。2019年5月にリリースされた警察の事務処理ゲームLegal Dungeonの開発者です。
 私は大学で法学を専攻し、現在も法執行に関係する事務所で働いています。私は仕事に関する自分の考えや気持ち、特に法執行機関での生活の中で毎日感じている罪悪感を、他の人と共有したいと考えてきました。
 ゲームは自分の内面を伝えるのに非常に便利で適切な媒体だと思い、2014年からゲーム開発を研究しながら4つのゲームをリリースしました。2016年、私はReplicaを作成しました。テロの可能性についての手がかりを探して、他人の携帯電話を覗き見するゲームです。IndieCade2016のImpactAwardなど、多くの賞を受賞しました。
 Legal Dungeonは、プレイヤーが警察の捜査書類を作成する、私の最新のゲームです。プレイヤーは、刑事事件のファイルを確認し(7ページから40ページもの文書にアクセス)、被告人を起訴するか不起訴にするかを決定します。すべての選択はプレイヤーが行うことができますが、非常に明確な制限があります。

内容:システムの力を体験させるゲームデザイン

 基本的に、Legal Dungeonのプレイヤーの役割は、すでに行われた捜査で収集された一連の情報を調べた後、「意見書」と呼ばれる新しい書類に記入することです。 各ケースの調査は同僚によってすでに終了しているため、手がかりを明らかにしたり、犯罪者を追跡したりするような動的な部分はありません。 プレイヤーは書類を読んで、人々がどのように証言したか、警察が見つけた手がかり、彼らの行動はどのような罪に問われるべきなのか、犯罪が成立するために必要な要件、そして類似した前例の事件ではどのような判決が下されたか、を探らなければなりません。

 この役割は、韓国の犯罪捜査部門のチームリーダーの実際の役割と非常によく似ています。 さらに、ゲーム内の犯罪情報システムであるCISは、韓国の法務省が作成した実際の韓国の警察で使用されているKICSとほとんど同じです。 ゲームのストーリーを構築する各刑事事件は、現実の世界で起こった実際の事件に基づいています。 その結果、プレーヤーは、一般的な警察官と同じような心情と仕事を経験して、同じように意見を決定することになります。 つまり、実際の警察官の意思決定のロジックをゲーム内で再現しているということです。

 もちろん、この再現プロセスは、ゲームに合わせるために変更する必要があると思いました。 書類にテキストを入力する作業は、ドラッグ&ドロップで置き換えられます。 警察組織の目標、システム内の共通の雰囲気、暗黙の圧力、および一般的な偏見も、ゲーム内のスクリーンメイトのチュートリアルによってプレイヤーの意識に注入されます。

 なぜ、こんな退屈な事務処理シミュレーションゲームを作ったのか?私は、ゲームのプレイヤーに対して、本当にプレイヤーに選択肢があるといえるか、と問いかけたかったのです。 彼らが現実の世界で全く同じ環境にいた場合、平均的な警察官の選択とは異なる他の選択をすることができるかどうか、を問いかけたかったのです。

なぜ:どこまでが個人の判断領域なのか?
あなたが警察だったら違ったといえるのか?

 ゲームのアイディアは、2010年6月に韓国のヤンチョン警察署長がソウル警察署長の辞任を要求した、というあるニュース記事に由来します。彼は、ソウル警察署長が結果を不当に重視していると感じました。その時、その警察署では、逮捕数を上げるためだけに無実の容疑者を拷問および虐待した罪で4人の警官が逮捕されました。その事件の後、内部告発者が解雇され、署長は辞任しませんでした。 何も変わらず、逮捕件数が警察官の業績評価において最も重要な基準であり続けました。

 Legal Dungeonのエピソード1は、フリーペーパーを集めて売ることによってどうにか生活している老人についてです。フリーペーパーでさえ他人が所有する場合は窃盗の対象になるため、彼は窃盗の罪に問われています。その章では、プレイヤーは起訴か不起訴かの選択を迫られます。また、容疑者の若い孫娘も、彼女がフリーペーパーを運ぶのを手伝ったため、共犯者として起訴することができます。

 あなたがどの結論を選択したいかに関わらず、正解はすでに決まっています。なぜなら、現実の世界で似たような事件を捜査するほとんどの警察官と同様に、プレイヤーは獲得しなければならないポイントの圧力を受けているからです。上層部からの注文と同僚からの動機付けにより、老人は5ポイントのモンスターになります。 彼は起訴する価値が十分にあり、あなたは仕事を続けるためにそのポイントが必要です。

 プレイヤーに「攻撃」と「慈悲」の2つのシンプルな選択を提供するプロトタイプを作成したとき、ほとんどのプレイヤーの回答は実際の警察官のものとは異なりました。彼らは老人を解放することを選んだ。これは単なるゲームだからです。ゲームがいくら結果重視のシステムで逮捕ポイントを獲得する必要性を示そうとしても、彼らは必死にポイントを獲得しようとしませんでした。さらに、現実の世界では、選択はワンクリックでできる単純なものではありません。現実の世界ははるかに複雑であり、人々は多数派の意見と空気に従う傾向があります。 そのため、別のゲームシステムを見つける必要がありました。


ひとつひとつの選択が他人の人生を左右する

 最終的に、Legal Dungeonは、プレイヤーに選択の正確な瞬間を表示しないように変更されました。単に起訴または不起訴を選ぶボタンはありませんが、プレイヤーは最終的な意見書にドラッグする手がかりを選択できます。つまり、被疑者の有罪を証明する手がかりを集めた場合、起訴をすることになります。彼の無罪を示す手がかりを集めると、彼を解放することができます。手がかりをドラッグする毎に、知らず知らずのうちに選択することになるのです。

 適用される法律条項を選択する瞬間でさえ、容疑者の運命を左右する可能性があります。老人に適用される法律を書いているとき、あなたはおそらく検索ウィンドウを使用して「窃盗」という単語を探します。

 そして、あなたはきっと犯罪の名前として「特殊窃盗」を入れるでしょう。なぜ?同僚がゲーム内のメッセージの中で「特殊窃盗」が正しい答えだと言ったからです。その条項は通常の「窃盗」条項よりも検索結果の高い位置にあるからです。見つけやすく、使いやすいからです。結局、あなたは彼の孫娘も共犯者にします。これが通常の警察の捜査の流れです。
 この過程を通して、貧しい家族を特殊窃盗犯として起訴して5ポイントを獲得したことから生じる罪悪感、無力感、恥の感覚、を引き出すことができると思いました。

 ゲームはこのように機能しています。 したがって、主体的に考えて独自の選択をするためには、事件書類全体をより注意深く読む必要があります。 法は、各手がかりを繋ぐための論理と洗練を要求するからです。


真の犯人が誰なのかを示すタイムライン

 Legal Dungeonはシステムについての物語です。韓国には、より多くの点数を得るために無実の容疑者を拷問することで法と道徳を放棄した警察官がいました。路上で横になっている酔っぱらいの民間人を手助けする代わりに、泥棒を捕まえるための餌として利用した警察官。 再犯率が高いとスコアが下がるので、累犯性犯罪者を逮捕しなかった警察官。 彼らは角を持つ悪魔ではありません。彼らはアドルフ・アイヒマンのように、考えずにただ命令に従うだけの労働者です。では、彼らはなぜ人間性を無視するようになったのでしょうか? 真の犯人は誰ですか?

 このゲームには14のエンディングと6つの実績があります。また、プレイヤーはコインを使用してゲーム内画面の飾りを購入できます。各エンディングと実績は容疑者の最終裁定を変更することで獲得でき、コインは犯罪者を起訴することで提供されます。ゲームのタイムラインをたどれば、知らず知らずのうちに悪事を働く平均的な警察官の1人になることができます。そして、何があなたを邪悪にしているのか、物事をより良くするために何を変えるべきか、をあなたが理解できることを私は確信しています。

[※1]しかし、真の犯人が私たちの外部にいるかどうかはわかりません。ハンナ・アレントが言うように、”悪の陳腐性は思考の欠如から来る”ものなのです。あなたが考え、自分の良心に従うなら、あなたはゲームをクリアすることはできません。倫理的な決定はゲームオーバーにつながります。各容疑者を天秤にかけ、処理して、すべての実績とコインを得た後で、プレイヤーと、ポイントのために容疑者を拷問した警官との違いについて考えるべきです。

結論

 倫理的な判断についての物語は、現実に基づいているべきです。そして、Legal Dungeonを製作している間に私は迷いました。他人の苦しみを自分の創作活動に使っているのではないかと心配し、その人達の痛みを思い出させるような事例や状況を再現することで新たな加害者になるのではないかと恐れて、何度も何度もストーリーを編集しました。他人の痛みは自分の外にあるものであり、共感は不完全でつかの間のものに過ぎません。

 それでも、現実の人々の死が無駄にならず、真の犯人が明らかになるように、私はこのゲームを作りました。理解が困難だとしても、あなたに届くようにとの願いを込めて。




[※1]の部分は、韓国語版の記事では以下のようになっている。

もちろん、すべての過ちをシステムに転嫁することはできません。
「真の犯人は『外』だけなのか?」という疑問を同時に持って欲しいです。
なぜなら、ゲームのすべてのエンディングを見つけてコインを収集することによってスクリーンメイトを購入したプレイヤーは、最終的に報酬と他人の人生とを天秤にかけたと言えるからです。その”プレイヤー”と、”成果を求めて容疑者を拷問した陽川警察署の職員”との違いを考える必要があります。




7 気付いた点や疑問点等の雑多なメモ

・各電話番号

8282 小太刀慎二   

7979 山本孝之

6180 鳥居理佐子

4885 鳥居佑一

・登場人物達の名前の由来
 本作の韓国語版における登場人物達の名前は、네 멋대로 해라というドラマの登場人物達の名前から取られているらしい(未確認)。
 また、小太刀慎二の名前は、碇シンジに由来しているような気がする(本作の前作におけるReplicaにもエヴァネタが出てくるので)。

・CISの画面中央上にあるCISのロゴが「KCIS」(Kだけ色がない)となっているのは、韓国の法務省が作成した実際の韓国の警察で使用されているKICSを意識しているから。

・【会話 金槌の出所】【会話 2度目の殺人】の語り手は、7章の事件の証拠物である金槌。
 根拠としては、語り手が引き出しに入っていること、館石再開発地区の工場現場に鳥居祐一と同行していること(鳥居陸は鳥居祐一の母親宅に居るため、同行することはない)。
 「おねえさん」(=清崎)が語り手に白粉をつけたのは、鳥居祐一の指紋等が金槌に残るようにするため。

(2020年6月追記)
『「冷たくて、少し生臭い白粉」とは、山本孝之のDNAのこと』、という指摘を見かけた。DNAとは具体的には、血液などのことであろう。確かに、「生臭い」という言葉はただの「白粉」の説明としては少し奇妙であり、この指摘が正しいと思われる。
(追記おわり)

・「あおい」のナビゲート内容
 各事件の「あおい」のナビゲートの内容をよく読むと、プレイヤーが被疑者を起訴すべきか不起訴とすべきか一定の方向(具体的にはED12に到達するように)に誘導している事がわかる。

例えば、
・プロローグでは、公然性を否定する事情を伏せて、「伝播可能性が高いという証言を探しましょう」と言う。
・1章では、罪名に(単純)窃盗罪を選ぶと、抹消される。
・2章では、被疑者の権利・被疑者が無罪であることを妙に強調する。
・4章では、「被疑者は『生来性犯罪者』に該当する」、「犯罪者を社会に出さないよう被疑者を拘禁することを目標に意見書を作成して下さい」と結論を決めつける。
・5章では、被疑者に虚言癖があり、自白が嘘であることを前提に話を進める。
・6章では、「反意思不罰罪に該当する罪を適用法条として選びましょう」と言い、傷害罪(起訴)ではなく、暴行罪(不起訴)を適用法条として選択させようとする。
・7章では、「被疑者は、被害者を殺した『殺・人・犯』なのです」と結論を決めつけ、起訴後には「正しい選択をしましたね」と言ってくる。
など。

・主人公が女性である理由は何か?(製作者の次々回作のテーマがジェンダー関係らしいので、何か理由があるのかもしれない)

(2021年12月追記)
 BIC Festival 2021でのSomi氏の講演によると、(少なくとも本作の前半部分まで)ジェンダーが意味を持たないようにした、マイノリティなどに対する差別がないように注意を払った、とのことです。「エンディングまで主人公が女性と気づかなかった」というレビューがあって良かった、と。下の動画の19:35~https://www.youtube.com/watch?v=IOr4oGkSaqI&t=810s



・清崎蒼と「あおい」が同じ名前なのはなぜか?
 大きな方向性としては、「あおい」には清崎蒼の分身または一部といえる要素があると考えてよさそうである。もっとも、「あおい」はゲームシステム上で複数の役割を果たしており、「あおい」がどのような存在なのか、をうまく説明することは中々難しいのではないだろうか。

・2周目以降も既読にならない「あおい」のナビゲーションは、何なのか?各章にある。

・2章 2個目の毒は誰から購入したのか?同じ2万円。

・5章の凶器であるナイフはどこへ行った?5章供述では「そのままおいてきた」。原田らがナイフを隠匿した描写はない。

・清崎への手紙は誰が書いたのか?鳥居陸?

・ED12の「あおい」の「CISにログインしなくても私の声が聞こえるようになりましたね」とはどういう意味か?
 CISにログインして(自分や警察にとって都合のよい)起訴・不起訴の意見書を書くだけでなく、CISにログインしていなくても(都合のよいように)証拠や事件等を捏造するようになりましたね、ということだろうか。

・同じくED12の「また後で挨拶に伺いますね」とはどういう意味か?

・原田は、何故清崎の部屋のベッドや冷蔵庫の中身を知っているのか?
 原田が清崎の部屋のベッドを知っていることは、原田と清崎の間に肉体関係があったことを示唆するものとも思える。もっとも、原田と清崎の間にこのような関係があることはそれまで伏線もなく、唐突ではある。
 あるいは、原田と清崎の間に肉体関係はなく、単に、原田が清崎宅を訪れたことがあるだけかもしれない。例えば、原田と清崎は、4章と5章の間で山本の死体を隠蔽しているが、具体的にどのように隠蔽したかゲーム中では明言されていない。もしかすると、原田は、山本の死体を清崎と一緒に、路上から清崎宅の冷蔵庫まで運び、その際に清崎のベッドを見たのかもしれない。または、7章の事件の後に、不信感を持った原田が清崎宅に侵入してベッドを見たのかもしれない。

・清崎が7章で原田を干した理由は?
 7章の連続殺人事件において、清崎が原田を捜査に加えなかったのは、原田が捜査の過程で被害者の携帯電話内にあるベッドの画像を閲覧することにより、事件への清崎の関与に気づくことを防ぐためだと思われる。もっとも、【連続殺人罪起訴 感謝の言葉】にあるように、原田は被疑者が捨てた携帯電話を拾い、中身を閲覧して、清崎の関与に気づいてしまった。

・ED13【&ビラ】で清崎が泣いた理由は?
 その直前で、山本が一万円を宮城真理の捜索のためのビラ印刷代に使ったことが判明する。
想像ではあるが、清崎が山本を起訴せずに一緒に宮城真理を探していれば、宮城真理は見つかり、山本が一万円のためにおとり捜査を手伝って死亡することもなかった、という後悔の涙であろうか。
 実際に、【窃盗罪不起訴 成果主義の実態を告発】では、清崎も捜索に協力し宮城真理は発見されている。(また、2章において、山本と宮城真理を現行犯逮捕したのは、7章の被疑者の鳥居祐一である。)

・ED12【&署長の計画】で、渋川が清崎の冷蔵庫の中身を知っている理由は?原田から聞いた?



8 各事件の元ネタとなる事件

いずれも韓国の事件であり詳細の確認が難しいため、列挙するに留める。

・プロローグの事件

・1章の事件

・2章の事件

・3章の事件

・4章の事件

https://www.law.go.kr/%ED%8C%90%EB%A1%80/(2007%EB%8F%841903)

・7章の自動車の事件

 

参照元

https://namu.wiki/w/Legal%20Dungeon/%EB%93%B1%EC%9E%A5%EC%9D%B8%EB%AC%BC%20%EB%B0%8F%20%EC%8A%A4%ED%86%A0%EB%A6%AC

 

 

9 ED14について

 本作のSteamページの説明欄に「14つのエンディング」とあり、製作者本人が14個のEDがあることを強調している以上、「ED14」と称する何かしらは存在すると思われます。



 ED14への到達方法は、おそらくタイトル画面左下部分(上記画像参照)に何らかのキーワードを入れるのでしょう。しかし、本作を3週ほどプレイしましたが、キーワードは皆目検討もつきません。
 製作者の前作のReplicaでも到達が困難なエンディングがあったようなので(未プレイ)、到達させる気のないEDを用意しておくことが製作者の趣味なのかもしれません。
 

 2020年12月現時点において、
 本作のSteamページの説明欄中の「このゲームには、14つのエンディングや6つの実績とかわいいスクリーンメイトショップが含まれています」という記載のうち、「14つのエンディング」とは、GameOverおよびED1~13のことを指していると考えています。
 つまり、ED14は存在しない、という見解です。

 詳しくは下記の追記群を参照して下さい。



 (2020年6月追記)
 ゲームの中身を覗いてもED14のテキストはなかったらしいことを、複数の人が言っているのをみかけました。
 各事件において、HPが0になったり時間切れになると、下記の画像のようにゲームオーバーになります。もしかすると、これを1個のEDとして数えているのかもしれません。



 ただ、ゲームオーバーをEDの数にカウントするのは他のゲームでもあまりみられないので違和感はあります。また、タイトル画面の左下部分の入力欄はなんなの?という疑問も残ります。
 また、twitter上で製作者に対してED14をみる方法を直接尋ねている人が何人かいたのですが、製作者は、眼力の強い女の子のgifを貼るだけで、ゲームオーバーもEDに数えるよ等は特に何も言ってませんでした(https://twitter.com/IndieSomi/status/1226706898704953345)。
 (追記おわり)

 (2020年7月追記1)
 この記事のコメント欄で、以下のような情報提供をして頂きました。ありがとうございます。

「左下の入力欄ですが、ゲームファイルを覗いたところデバッグコマンドの入力欄のようです
DEV_MONEY_FULL でコイン99枚
DEV_EPISODE_ALL ですべてのエピソード開放
DEV_ACHIEVE_ALL で全実績解除
DEV_ITEM_ALL でスクリーンメイト全購入
これ以外にコマンドは見当たりませんでした
また、その他にED14に関するものも見当たらなかったので、ゲームオーバーを含めて14個なのだと思います
実際、タイトル画面左の発見したED一覧で一番上はゲームオーバーですし」


※上記のDEV_EPISODE_ALLというコマンドには、入力しても鍵付きの会話用の鍵が5個しかもらえないため、6個ある鍵付きの会話を5個しか開けないという不具合があるようです。

 (追記おわり)

 (2020年7月追記2)
 本作の日本語協力をされていた方(プチデポットのしごと氏・ことり氏)によると、「ゲームオーバーもエンディングに入るみたいですよ。」とのことです。


 (追記おわり)






10 個人的な本作の総評

 とりあえず私が本作について評価している点についてまとめておくことにします。


(1)本格的な法律モノなのに面白いこと

 本作は、刑事法の考え方をそれなりに体験でき、かつ、比較的エンターテイメント性の高い作品です。
 法律知識とエンターテイメント性のいずれか片方に注力している作品はよく見かけるのですが、両立出来ている物を個人的にあまり見たことが無かったので驚きました。
 製作者は法執行関係の事務所に勤務しており、また、実在する事件を参考にして本作を製作したそうです。


(2)主張の表現方法として興味深いこと

 はっきりとは明言されていませんし、やや単純化し過ぎている気もしますが、「6 製作者の意図」で引用した記事からすると、

成果主義制度が警察官の判断を歪めている
・考えることをやめれば、警察組織のシステムの下で、いつの間にかアドルフ・アイヒマンになってしまう

というのが、本作における製作者の主張であるように思われます。


(本作の主たるテーマが警察組織における成果主義制度であることは、ゲームをプレイすればある程度明らかだと思います。

 また、本作リリース時のインタビュー記事において、インタビューアーの「成果主義制度が問題なのですか、それとも事件を実際に見ていないで意見書を書いていることが問題なのですか?」という質問に対して、製作者が「事件を知らずに書類を作成していることが問題だという話ではありません。」と回答しています(https://www.thisisgame.com/webzine/special/nboard/5/?n=93759&fbclid=IwAR28u2YsskN4EYG1E4DRM9iVVCTZUOwRAQUuVNgc36HjjdntmcCAitW3E4Y)。これは、本作のテーマが成果主義制度であることを製作者が消極的に述べたものと言えるでしょう。)

 製作者の主張に賛同するかどうかは別として、ゲームという媒体によってプレイヤーに体験させることを通じて自己の主張を表現する、という手法自体は興味深いです。



(3)日本語翻訳が自然であること

 Steamゲーには言語の壁がつきまといます。注目されているタイトルでも日本語訳が無いために断念せざるを得ないことはよくありますし、日本語訳があっても機械翻訳である場合には英語に戻して遊ぶ必要があったりします。とりわけADVというジャンルでは、文字を読むことがプレイの中心になるため、翻訳の質はプレイの評価そのものに直結します。
 本作は、発売当初からまずまずの日本語訳がつけられており、その後、日本のインディーゲー製作者の方々(プチデポットのしごと氏・ことり氏)が日本語翻訳の協力をされたため、ほとんど違和感のない訳となっています。

 本作の翻訳については下記の記事参照


・プチデポットの公式ブログ(翻訳の経緯)

・AUTOMATON(Nintendo Switch版発売時のインタビュー記事)


 

 

 

  非常に細かい話ではあるのですが、本作の法律の翻訳については変えたほうがいいかもな、と思う部分が無いこともないです。

 第三章の特殊ルート起訴のタイトルが「暴行致死罪起訴」となっていますが、日本の刑法上では「暴行致死」という言葉はないので、「傷害致死罪起訴」とすべきでしょう。
 また、第三章のダンジョン中に、国家公務員法を根拠の一つとして作為義務を認めるルートがありますが(Q.敵の義務に関連する規定、A.国家公務員法100条)、日本の法体系を前提とすれば、被疑者は地方公務員なので、国家公務員法を根拠にするのはおかしいですね。
 もちろん、AUTOMATONの記事によると、「法律についても、日本の法律をかなり見て寄せたんですけど、細かくはいろいろと違うんですよね。なので違う部分は、あんまり違和感がでないように調整しつつ進め」られたということなので、おそらく上記の点に気づいた上で、あえて現状のように翻訳されたのだと思います。

 繰り返しになりますが、非常に細かい話ですので、翻訳がよくないとかそういう話ではありません。

 

                                     以上